自分は決してお人好しではない。
でも変だ。
ウタクに怪我を負わせ、自分だって追い込まれてるっていうのに……
大神様を少しでも知りたいと、力も入らない状態で、
うつろに目を開けてまで、大神様の話を聞こうとするなんて。
死の境を彷徨っているうちに、先に心から仏様になってしまったんだ。
大神様は私に、そんな仏心が芽生えているなんて知らずに喋り続ける。
「それでも結局、ジジィ共の間で、ワイが行くべきっちゅう結論になった。
結論が変わらんのに、散々なこと言われて腹立っとったけど、
頭の固いジジィ共相手に反論するんも大儀かったけぇ、ワイはさっさと吉備の国へ行くことにした。
ジジィ共に言われたからじゃねぇけど、人間がワイのこと、
最初から簡単に受け入れられるとは思ってなかった。
それならそれでいい。
技術だけ適当な奴に教えてワイは早う帰ろうと思っとった。
じゃけど……人間の反応は、ワイが考えとったものと違った」