「……っ!」
いつの間にか握っていた拳が痛い。
でもそれ以上に胸が痛い。
「けど、妖怪は手応えがねぇし、ウタクだけいじめったって面白ぉねぇ。
やっぱ人間が一番じゃ!」
大神様は豪快に笑った。
私は理解ができず、ただ怯えながらも、冷やかに睨みつけるしかできない。
「じゃけぇ、人間!ワイを楽しませてくれよ?」
「……」
笑い終えた大神様は、瞳に妖しい光を持って私を試すように見てくる。
「実雨!そこから早く逃げろ!」
「黙れっつっとるじゃろぉがぁ!!」
大神様は怒りにまかせて、朱の祭壇に扇を向ける。
瞬間、雷鳴のような音が響き、祭壇が崩れ落ちた。
私は反射的に伏せた顔を上げて、埃が舞い散る崩れた祭壇の方へ視線を走らせた。