私が歯を食いしばることしかできずにいると、頬にチクリとした痛みを感じた。
そっと触ってみると、手の平にはヌルリとした生温かな血がついた。
私が血を確認する様子を見て、大神様は鼻で笑う。
「いじめは、あっさりイッてしもぉても面白ぉねぇじゃろ?
じっくり焦らしていかなぁ。ワイ、えぇ趣味しとるじゃろ」
大神様が浮かべた笑顔に、何かが背筋を這ったかのようにゾクリとした。
私の後ろにある、本殿の壁は傷が付いていた。
でも私には頬だけで、血の量も、涙が頬を伝う程度。
言葉通り、私をあっさり殺すこともできるけど、じっくりいたぶって、同時にウタクの精神も壊したいんだ。
「なんでここまでするの……?」
私とウタクが婚姻の儀を交わせば全て治まるんじゃないの?
私は悔しくて、悲しくて、怖くて。
いろんな感情と共に、流れ出しそうになる涙をこらえて問いただしてみた。