「実雨……!」
本殿内に響く凛とした声。
ずっと……聞きたくて、探してきた声。
「……ウタク……!?」
「馬鹿が……なんで来た」
「ウタクを助けに来たのに決まってるじゃない!」
「ほぉ……いじめられに、の間違いだろう」
ウタクの姿は見えなくて、耳に届いた声は苦しそうでもあり、少しだけ嬉しそうでもあった。
意地悪なところも健在で、ちょっとだけ安心したのに……
「だが、生憎期待には答えられそうもない。帰れ」
「そんな!」
帰れと言った後すぐ、ウタクは喉を詰まらせてむせた。
いじめて欲しいなんて、もちろん期待してない。
でもこんなに弱ってるウタク……ウタクじゃないよ!