「ナライ……私は行く!もう……じっとしてるなんて無理だよ!」
「実雨ちゃん!」
ナライは私を引き止めたそうな顔をしているけど、言葉では止めなかった。
きっとナライもわかってる。
ウタクがまずい状況であること……。
視線を下へと落とすと、地面に座り込んだままの皐月さんが顔を上げた。
「実雨様」
「皐月さん……?」
腕は傷だらけだし、着物だってボロボロ。
顔も涙でグチャグチャ。
それでも皐月さんは身なりをただし、足を揃えて正座をし、スッと背筋を伸ばした。
その姿は……真っ白で気高い、百合のよう。
「どうか、ウタク様をお助け下さい」
皐月さんは地に額が着くほど、深く静かに頭を下げた。