それは山全体にこだまする。
『言ったんじゃけどなぁー、狐も狸もいらんって』
狐も狸もいらない……けど、人間の私は必要……ということ?
始めから……私にしか通れないように術がかけられてるんだ。
『阿呆ぉは狐と狸じゃな。
そもそもワイと力を比べりゃ月とすっぽんの狸が、ワイの仕掛けた術を敗れるわけねかろぉがぁ』
「なんだと!?」
大神様の一癖ある喋りが耳に残る。
確かにナライは大神様に束ねられている精霊の一匹にすぎない。
今、捕えられてるウタクだってそう。
『さっきも狐がよぉ頑張っとったけどなぁ』
「……狐?」
「皐月……お前もか。その怪我、大神様の術を解こうとして、力を使いすぎた反動だったんだな」
私とナライが皐月さんを見ると、皐月さんは微かに顔を歪めて腕を抑えた。