「実雨ちゃん……?」
私の声に、ナライは冷静さを取り戻して、私を見た。
「もしかしたら術……解けてるんじゃないの?」
「え?」
「……ドブネズミの頭の中はネズミ以下ですね」
呆気にとられるナライと、ため息を吐く皐月さん。
やっぱり私、術とかわかんないのにバカなこと言ってる?
ウタクが聞いたら、意地悪に笑って、チクチクいじめてくるんだろうな。
それでもわかんないじゃない!
「私、行ってみる!」
「ま、待てよ!全身でぶつかるのは危ないって!もうちょっと様子を見てから……」
私が歩き出したのを見て、ナライが止めようとしたけど、私はそれに構わず歩いた。
ナライを越えて……一歩、二歩、三歩……。