低くて、頭に、耳に、心臓に……直接響く声。
さっき聞いた声と一緒。
「……大神様?」
私は天を見渡すが、もちろんそこに姿があるわけはない。
『ワイは狐も狸もいらんのんじゃけどのぉ』
のらりくらり、ゆらりと、それでいて重みのある口調。
「実雨ちゃん、気をつけて。ここから術がかかってる」
そう言ってナライはそっと腕を伸ばして、術のかかっている部分に指で触れた。
バチバチッと音を立てながら、線香花火のような電流が現れる。
「待ってろ!こんな術、俺が今から解いてやるから!」
ナライは体勢を整えてから目をつぶり、小さく術を唱え始めた。