その空気を破ったのは……。
「相変わらず皐月は性格悪いなぁ!」
もちろんナライ。
「人が腕の心配してやってるってのに、はぐらかすし。
自分だってウタクをどうにかしたくてここに来てんのに、実雨ちゃんのことグチグチといじめやがって」
怒ったように言いながら、数歩進んで右腕伸ばし、遠くを指差した。
「いいじゃん、皆でウタクを助けに行けば!」
「ナライ……」
ナライの指先をたどると、白く分厚い靄もそれだけは避けるかのように、厳かにそびえ立った赤い鳥居が靄の合間から見えた。
あの先に……大神様が?
途端に鼓動が速くなって、カタカタと足から全身に震えが走る。