山の中は白く靄(もや)がかかっていて、遠くが見えない。
それに生温かい空気が漂っていて、ちょっと暑い。
ついでに言うと、ナライは元々ウタクと違って体温が高いみたいだから……更に暑い。
ナライがへこんでしまうのが目に見えてるから、決して口には出さないけど。
「どこに大神様とウタクはいるのかな?」
「たぶん……もうちょっと先に鳥居があるんだよな」
私にはあまり遠くはわからない。
わかるのは近くにうっすらと太い幹の樹木が見え、
その木に寄生するかのように絡みついている植物や、垂れ下がったり、巻きついたりしているツルが生えているということ。
緑色が深い苔も張り付いている。
そんな側にあるものしかわからない私と違って、「もうちょっと先」と言葉にできるナライはきっと五感の全てで、辺りを探っている。
やっぱりナライに付いてきてもらって良かった。
例え大神様の居場所がわかったとしても、こんな地上から離れたところ、
どうやってきたらいいかわからず、途方に暮れているところだった。