でもそんな目をしていたのはほんの数秒。
すぐ、気を取り直したように瞬きをし、
「なんて……俺としたことが弱気になってんじゃん!」
頭を左右に振った。
今も空中に浮いたままだし、さっきまで怖いと思っていたのに……少し気持ちが明るくなって、クスッと笑ってしまった。
「身を引いた、なんて言わないよ?ここでカッコイイとこ見せれば、実雨ちゃんが俺の嫁になる可能性もあるもんな!」
「え!?」
「その“あり得ない”っつー表情、落ち込むからやめてよ」
ナライは大袈裟に、悲しげに耳も目も口もしょげて見せた。
だって……あり得ない、っていうより、この世界の嫁制度がイマイチわかんないんだもん。
「しゃぁない!こうなりゃ俺も男を上げるため……頑張るか!」
ナライの目に闘争心が燃えあがるとともに、私も表情を引き締めた。
そして山の中へ……進んだ。