途端に体が硬くなる。
ゴクッと唾を飲み込んだ喉さえも強張っているよう。
「実雨ちゃん……やっぱり……」
山に近づくのを止め、浮いたままの状態でナライは低く呟く。
「私、行く!引き返すなんて……絶対ヤダからね!」
ナライの言葉の先を読んで、私は強く言い放った。
問う前に私の返事を聞いてしまったナライは、苦い顔で「わかった」と、諦めたように頷いた。
「ホント……ウタクにも実雨ちゃんにも負けるよ」
「え?」
「俺なら……大神様が怖くて、誰の幸せを願うでもなく、自分の身を守っちゃう」
ナライはウタクを思い浮かべているのか、切なげに遠い目をしていた。