そんなことを考えながら、景色を見ないために目をつぶっていると、すぐ上から声が降ってきた。


「あの山だ!」

「え……?」



あの山。


それはきっと、目の前にある山のこと。


私を繋ぎとめてくれているから、指を差すことはできてないけど、ナライが示そうとした山はわかる。



だって……地上を見下ろすと瞳を動かすことなく、狐の集落と狸の集落が同時に確認できるほど遠いのに。


山は視線を落とすことなく、真っ直ぐ向いたまま確認できる。




……こんな山、存在がおかしい。




こんなの……大神様の住処以外、何ものでもないじゃない。