ヤマジは、ナライが私を嫁にするために、あやかしの世界へ連れてきたと勘違いしているらしい。



「ち……違ぇよ!なんで俺がそんな卑怯なことするんだよ!」


ナライもさすがに腹が立ったのか、一歩後退していた足を今度は前に全力で踏み出す。


「ならなぜ、人間界でいるはずの実雨様がここにいるんです!」

「実雨ちゃんが来たいって……ウタクをどうにかしたいって言うから、連れてきたんじゃねぇか……!」


ナライは辛そうに眉をしかめた。



……ごめんね。

ナライ……そんな顔させちゃって……。



ナライのそんな様子を見て、ヤマジも気がついたように、顔の表情を変えた。



「ぼっちゃま……そういうことだったのですね」



私がここにいる意味を理解したヤマジはナライに謝りつつも、少しだけ嬉しそうに見えた。