半ば滑り込むような形で勢いよく現れたのはヤマジだった。


「ぼっちゃま!どちらに行かれ……あ、実雨様……!」


汗を流しながら、私に気付いたヤマジは言葉を止め、そして再び私からナライへと視線を戻した。


「……まさかぼっちゃま……!」

「な、なんだよ!?」


ヤマジは怒りを抑え込んでいるかのように、微かに震えている。

ナライはヤマジの反応の意味がわからず怪訝な顔で、一歩後退しながら聞いた。



「狐が大神様に捕まっているのをいいことに……実雨様を嫁に迎えるなんて……!

非道です!私は許しませんぞ!」



ヤマジがナライを怒鳴りつける声で、空気がビリビリと振動した。


周りで冷やかすように見ていた精霊達も、一瞬にして固まる。