ナライは「だーっ!静かにしろー!」と、怒っている風に、でも嬉しそうな顔で皆の手を振り払った。


「言っとくけど、この子はウタクの嫁だからな?手ぇ出すなよ!」

「そんなこと言って……アンタが一番、手を出したそうじゃないか」

「オバァ……覚えてろよ?」


ナライにオバァと呼ばれた老齢の精霊は、いたずらっ子みたいにニシシと笑っていた。


その笑顔を見て、ナライも困ったように笑った。


「って……こんな話してる場合じゃねぇんだ」


ナライは気を取り直すかのように、笑顔から真顔に変え、


「で、ヤマジはどこにいる?もう屋敷に帰ったかな?」


と、辺りに集まってきた精霊達に尋ねた。



一人の精霊が「ヤマジさんならまだ近くに……」と、背伸びをしてキョロキョロ見渡し始めた。


すると……


「ぼっちゃまー!!」


心配しすぎて今にも泣きだしそうな声が聞こえてきた。