-1999年

「大樹、今日は早かったね。」

そう言って笑う彼女の顔色は
確実に昨日よりも悪くなっている。

「あぁ。まぁ。」
とだけ返して腰掛けた。


彼女の余命は後3ヶ月。

まだ、本人は知らない。

だから、

「そうだ大樹、勉強教えてよ。
このままじゃ病気が治っても、大学行けないよ。」

なんて無邪気なことを俺に言うんだ。

麗花は平気で俺を傷つける。

胸の奥をぎゅって握られたみたいに

苦しくて、息ができなくて。

それでも、言葉を詰まらせないように
必死でこたえる。


「…。麗花は頭いいからへ-き。
今は病気直すことだけ考えろよな。」