「葵が風邪なんて、あり得ないよね。」
「さすがの森崎くんも風邪には勝てないか。」
「みたいだね。」
「ホント、森崎くんに勝てるのはウイルスと璃依だけだと思うよ?」
「私だって歯が立たないよ。たぶん、この学校で葵に勝てる人はいないと思うよ。」
この周辺って言っても過言じゃないかも。
だって葵は、今年の高体連で全国大会まで進んだんだから。
って言っても、本人が面倒くさいって言って辞退したけど。
もったいないよね。
「森崎くんより強い人、いるなら見てみたいね」
「いたらね」
葵より強いやつなんて、そうそういな…
「いるけど?ここに」
えっ!?
突然後ろからそんな声がして、驚いて振り向く。
そこにいたのは、柔和な笑みを浮かべる見たことのない男の人。
「…誰?」
彼の言った言葉を思い出し、少し警戒して彼を見据える。
「誰って…、璃依もしかして、芦野(あしの)君のこと知らないの?」
芦野?