「いつも逃げようとしてるだろ。今日くらいは、逃げるの禁止、な。」





何それ…。




「べ、別に逃げないしっ」



「そうか?」




恥ずかしくて、ふいっと顔を反らす。




だけど、葵はくつくつと喉を鳴らして笑ってた。





なんでそんなに余裕なんだっ。




「ほら」




そう言って、左手を私に差し出す葵。




それが何を待っているのか、わかる。





「…仕方ないな」




そんなことを言って、葵のブレザーの袖をちょこっと掴む。





自分から葵の手を握るなんてかなりハイレベルなこと、まだ出来ないから。




これが精一杯。





「なんか文句あるっ!?」




キッて葵を見上げると、困ったような、それでいて少し嬉しそうな顔をしてて。




そのせいで元々熱かった顔が、さらに沸騰した。





「もうちょっと、だな」




「うるさいっ」




葵は、私にブレザーを掴まれたまま無人の廊下をゆっくり歩きだした。





葵なんか、嫌いだっ



バカ葵っ…












*Round×1 END*