「今、帰ろうとしてたろ」
「うっ…」
ばれた…。
なんで、葵には私の考えてることがわかるんだろう。
「璃依、ぼーっとしてねぇで、帰るぞ」
そう言って、私のカバンも背負った葵はさっさと教室を出ていってしまった。
「えっ、あ、待ってよ…!」
ええっ、先に行っちゃうの?
慌てて葵を追い掛ける私。
だけど、教室のドアを出た瞬間!
ドンッ。
「わっ」
出てすぐ、何かに激突してしまった。
鼻をぶって、ジンジンする鼻を押さえながら見上げると。
「バーカ」
そこにいたのは、先に行ったはずの葵で。
クスッ、って悪巧みするみたいな微笑みを浮かべてそこに立っていた。
「…っ」
びっくりして、離れようとするとグッと捕まれた手首。
「逃がさない」
クスッ、って笑った顔が悔しいくらいカッコよくって。
「に、逃がさないって何それ…。まるで私が逃げるみたいな言い方だね」
恥ずかしくって、可愛くないことを言ってしまった。