にやり、と思わず笑みがもれる。



「どけぇ!!女ぁぁあ!」


バイクの男は相変わらず、突っ走っている。


止まる気はない、と。



なら、手加減は必要ないね?



「今すぐ止まんないと、痛い目見るよ!」




それでも止まらない。



もう、ここまで来ると私がひかれる。



やってやるか。




「止まれって…」



私は背負っていた重たいスクバをまるでハンマー投げをするかのように振り回す。



「言ってんでしょうが!!」


そして、遠心力のかかったそれを勢いよくバイクの男にぶつける。



「ぐぅっ!」



スクバは見事胸へと直撃し、男はバイクごと倒れ、転がった。



「くっそ…ぉ」



それでもまだ、苦しそうにしながらも立ち上がろうとする男。


まだ起きるか。



私は男に近づいて、傍らにある鞄を拾い上げた。



「これ、返してもらうから」


「こんの…!くそガキ!」


「そのくそガキにやられたのはどこの誰」



ふふん、と笑ってみせる。


なんだか最近、あいつに似てきてしまった気がする…。