―――春。
今年もまた、真新しい制服に身を包んだ新入生たちがやってきた。
これで、後輩を迎えるのは二回目。
そして、この高校で春を迎えるのは三回目。
二年は、あっという間にすぎた。
私が高校生でいられるのも、あと一年となってしまった。
「…早いなぁ。」
家までの道すがら。蒼い空を、何気なく見上げる。
小春日和の空気が、心地いい。
柔らかく吹く風が、だいぶ伸びた私の髪を梳いていった。
まるで、あいつがやるみたいに…。
「あぁっ!返しておくれぇ!!」
突然、私の後ろからお婆さんの悲鳴が聞こえた。
その瞬間、物思いに耽っていた私は我に戻って、後ろを振り返る。
「あたしの鞄返しておくれ!」
遠くで必死に叫ぶお婆さん。
その前を、女ものの鞄を持って走るバイク。
それで私は瞬時に状況を理解した。
「そこのアンタ!!止まりなさい!」
道の真ん中に立ちはだかり、バイクに向かって怒鳴る。
バイクはまだ、30mほど奥にいる。
やれないこともない。