そんな微笑ましい光景は、一瞬。



「―――遊」



葵衣の声によって、崩れた。

私は顔を強張らせながら振り返った。

葵衣は私を一瞬、睨んだかと思えば、笑顔で近付いて来た。



「遊の親友の片桐葵衣。よろしくね!」



3人に葵衣お得意の笑顔で接して居る。

剛さんもヘイジさんも、学年、いや、この学校で一番モテる葵衣と話せて嬉しそう。

基槻はいつも通りのポーカーフェイスだけど、葵衣は基槻が好きだ。

だから私は、不安からか、基槻のカッターシャツの裾を掴んだ。



「泣きそうな顔(笑)」



基槻は小声でそう言いながら、私が裾を掴んでた左手を掴み、繋いでくれた。

それだけで不安が解消された
――――気がしなかった。