部屋に入ると、久しぶりだな、とタカは笑っていた。


ただそれだけのことで泣きそうになって、自分から彼に抱き付くと、その、いつもとなんら変わりない香りに救われる。


あぁ、あたしはこの人が好きなんだ。


タカの胸に顔をうずめながら、ぬくもりに悲しくさせられる。



「おいおい、どうかしたか?」


何も言わずにかぶりを振ると、



「何だよ、わけわかんねぇから。」


彼は笑いながら口付けをくれた。


いつの間に、こんなにも優しくしてくれるようになったろう。


でも、今は何も考えたくなくて、もう少しだけこうしていたいと思った。


が、シロが邪魔をするようにあたし達の足にすり寄って来て、みゃあ、と鳴く。



「こいつ最近、玄関の前を陣取って、お前の帰りを待ってたみたいだからな。」


タカは肩をすくめた。


何も変わらないこの部屋に、一生閉じこもっていたいと思う。



「そういやお前、模試終わった?」


「うん。」


「じゃあ、飯でも行かね?」


「…良いの?」


「あぁ、勉強頑張ってたみたいだし、たまにはね。」


違うんだよ、と言いたくて、でも言えなくて、顔を伏せた。


このままでは、タカに依存して、自分の足で立てなくなりそうで怖い。