カラオケ屋を出た頃にはすっかり夜になっていて、タクシーを呼んで家まで帰った。


速攻でシャワーを浴びて、改めて鏡で見た自分の体は汚らわしい。


今まで一体何人の男達に撫で回されてきただろうか。


醜いだけで、これならばいっそ、消えてしまった方がマシじゃないか。


なのに、自殺する勇気もないあたし。


結局は嘆いたってどうにもならなくて、ため息混じりに痛めた体を押して自室へと戻る途中、玄関先に見慣れない女物のパンプスを発見した。


もちろんその隣には、アイツの靴。


春樹が、しかも女を部屋に連れ込んでいるということ。



「…ふざけんなよっ…」


思わず吐き捨てるように呟いた。


金の無心だけでは飽き足らず、この家には誰も入れないというルールまで侵しやがって。


けれど、今は顔を合わせたくはなくて、苦虫を噛み潰しながら部屋へと戻った。


が、そこにあたしの安息はなかった。


隣の春樹の部屋から漏れ聞こえるのは、女の喘ぎ声と、ぎしぎしとうるさいベッドのスプリングの音。


耳を塞いでも、頭が割れそうだ。


堪らずガッ、と渾身の力で壁を殴り付け、逃げるように家を出た。


半乾きの髪の毛に夜風は冷たくて、けれど今はそれすら気にならないくらいに苛立ってしまう。


走り抜けてマンション近くの公園まで来たところで、息が切れて足が止まった。


この世界のどこにも、あたしの居場所はないのだろうか。


悔しさと悲しさでぐちゃぐちゃになりそうだ。