「別に、乃愛のやってることに口出すつもりはないけど、妻子持ちに本気になるのは、あたしもどうかと思うの。
不倫が悪いとは言わないけど、そういうのって遊びで終わらせることでしょ?」


珍しく意見が一致していた。


本気になれるような相手が見つかったことは、確かに喜ばしいことなのかもしれない。


でも、さすがに今回ばかりは嫌な予感がする。



「リサ、どう思う?」


問い掛けに、正直困りあぐねてしまった。


けれど、ろくでもないあたし達ふたりが注意出来る立場でもない。


乃愛の家は母子家庭だ。


お母さんはまだ35歳で、仕事は水商売をしていると聞いた。


だからいつも家にひとりでいる乃愛が、擬似的に父親のような相手にぬくもりを求める気持ちがわからないではないから。


例えそれが、相手にとって都合が良いだけの関係だったとしても。



「まぁ、当分様子見てようよ。」


「だよねぇ。
それにあたしも妻子持ちと遊んだことあるから、何も言えないし?」


彼女はそう言って肩をすくめた。



「うちらってホント、制服デートとかってやつとは程遠いよねぇ。」


「ちょっと、嘆かないでよ。」


しみじみと言った梢の言葉に突っ込み、それと共にカラオケ屋の入り口前に到着した。


虚しいだけの、女ふたり。