道明さんの恋人で、タカのお姉さんだったアイさんが、殺された。


頭の中で反復させたけれど、それは当然のようにあたしの思考の及ぶ話ではない。


以前、死んだ人間は恋愛なんか出来ないんだから、とか言っていた言葉を思い出した。


何も言えない沈黙の中で、彼は語る。



「アイは当時、昼間はＯＬしながら夜はキャバで働いてて。
まぁ、俺はそこで知り合ったんだけど。」


「………」


「弟だっつってタカを紹介されたけど、あの頃からクソ生意気でなぁ。
それ以来だから、もう何年一緒だかも思い出せねぇけど。」


だからふたりは、血の繋がりなんかなくとも、本当の兄弟のように見えたのかもしれない。



「よく３人で一緒にいたし、今日みたいに海に行ったこともあった。」


それが、懐かしいな、と漏らした道明さんの言葉の意味。


悲しくなってしまう。



「じゃああたしはふたりにとって、アイさんの代わり？」


それは違うよ、と彼は制する。



「人は誰かの代わりになんかなれないし、リサちゃんはリサちゃんだろ？
生きてる人間の方が、ずっと尊いんだから。」


だから比べるようなことじゃないよ、と道明さんは言った。


タカの疲れ切った寝顔を見た。



「道明さんは今でもアイさんのこと愛してるの？」


どうだろうな、と彼は笑ってから、



「悔むことが多い分だけ、色んな事を思い出すよ。」