車に戻り、帰る車中、タカはあたしの肩に頭を預けるようにして眠ってしまった。


揺すっても起きないところを見ると、本当に疲れていたのだろうけど。



「タカ、今日は寝てないって言ってたの、マジだったみたいだな。」


ルームミラー越しに、道明さんは苦笑いをしていた。



「まぁ、コイツは結構無茶ばっかするけど、リサちゃんも見捨てないでやってよ。」


「優しいんだね、道明さんは。」


「そうか?」


「そうだよ。
恋人とかはもっと大切にしそうな感じだけど。」


煙草を咥えて言ったあたしの言葉に、また彼は苦笑いを浮かべていた。


すっかり外は薄暗くなり、オーディオからは“月のしずく”という曲が流れていた。


映画で使われ、一時期話題になっていた歌だ。


道明さんは少し言い辛そうにして言葉を手繰り寄せた。



「俺の恋人は、もういないんだ。」


「……え?」


「死んだっつーか、殺されたから。」


冗談とは思えないほど、抑揚のない声。


その理由なんて、とてもじゃないけど軽々しく聞くことは出来ない。



「今日は命日でな、朝一番にタカと墓参りに行ってきたよ。」


そして彼はルームミラー越しにあたしを一瞥し、



「俺の恋人だったアイは、タカの姉ちゃんだから。」