「やっと邪魔者が消えたな。」


そう言って笑ったタカは、先ほどのことには触れず、あたしの手を引いて浜辺を歩く。


砂に埋もれそうな足を踏み出す度に、何故だか悲しい気分にさいなまれてしまう。



「そういやお前さっき、電話しながらキレてたよな。」


思い出したように彼は問うてきた。



「別に言いたくないなら聞かないけどさ、俺らの前で無理する必要なんかねぇから。」


一歩先を行くタカの髪が、風に揺れる。


背中越しでは彼がどんな顔をしているのかはわからないけど、でも優しい声色だった。


繋いだ手は、ひどくあたたかいもの。



「道明くんも、あれで結構お前のこと気に掛けてるみたいだし。」


「………」


「まぁ、あの人は他人の世話焼くのが好きなタイプだし、ただの心配症ってだけなんだけど。」


タカは笑ってこちらに振り向いた。



「好きなんだね、道明さんのこと。」


「まぁ、ガキの頃から世話になってたしな。」


珍しく、彼は否定なんてしなかった。


手を繋いで、並んで浜辺を歩いていると、まるで恋人同士のようで、悲しくなるけれど。


それから道明さんが、あたしだけにジュースを買って戻って来てくれ、それに怒ったタカと、また口喧嘩をしていた。


あたしは笑いながら、日が傾く水面を見つめていた。


それぞれが抱えたものと共に、世界は暮れてゆく。