「リサちゃんが水着になってくれりゃ良いのになぁ。」


という、道明さんの言葉は無視し、ヒールを脱ぎ捨てた。


海外の南国リゾートには程遠いけど、でもはしゃがずにはいられない。


いや、空元気に振る舞っていたかっただけなのかもしれないけれど。



「ねぇ、行こうよ!」


男達の腕を引く。


まるでこの場所はあたし達だけのもののようで、まだ初夏とも言えないような風に吹かれながら、目を細めた。



「つか、着替えねぇのに濡れたらどうすんだよ。」


「おいおい、それじゃ俺の車まで濡れるってことか?」


あんたらが海に誘ったくせに。


ふたりの文句の多さに呆れてしまい、でも考えることが馬鹿らしくなって思わず笑ってしまった。


すると、ふと彼方を見つめて煙草を咥えた道明さんは、



「何だか懐かしいなぁ、タカ。
まるであの頃に戻ったようだと思わねぇか?」


タカは何も答えず、顔を俯かせた。


寄せては返す波音だけが、沈黙の帳に響き渡る。


あたしの知らない何かだけど、立ち入るべきではないと思った。



「アイツがいなくなって、何年だっけなぁ。」


「やめろよ、今は。」


タカは強い口調で道明さんの言葉を制した。


そんなタカの様子に道明さんは肩をすくめ、今度は明るい顔をして、



「何か飲み物買ってきてやるから、お前ら散歩でもしてろよ。」


そう言って、あたし達からきびすを返した。