そのまま食事を終えて店を出た時、あたしの携帯が着信音を響かせた。


どうせ乃愛か梢からだろうとディスプレイを持ち上げてみれば、そこには“春樹”という文字が光っていた。


途端に鼓動が速くなり、脂汗が背筋を伝う。


あたしはふたりに背を向け、僅かに震える指で通話ボタンを押した。



『なぁ、お前今日、家帰んの?』


電話口から聞こえた相変わらずの高圧的な声色に、舌打ちをしそうになる。



「何?」


『金、貸してくんない?』


コイツはいつもこうだ。


大体、きっちり折半という取り決めなのに、春樹はあたしに金の無心ばかり。


大方予想はしていたけれど、でも折角の良い気分を害され、怒りさえも込み上げてくる。



「いい加減にしてよね!
そんなことで電話なんかして来ないで!」


『んだと?』


「てか、あたしとアンタは他人だって約束、覚えてないわけ?
マジ、アンタなんかと喋ってるだけでイラつくのよ!」


吐き捨て、電話を切った。


悔しくなって、肩で息をしていると、ふたりのこちらを伺うような視線に気付かされる。


けれど、上手く取り繕うことも出来ず、あたしは顔を俯かせた。



「リサ、何かあった?」


タカの問いに、無言でかぶりを振った。


春樹と同じ血が流れてるだなんて、この人にだけは知られたくはないから。


あたしの様子に、タカと道明さんは顔を見合わせ、困ったように肩をすくめる。