その日の夜、タカはあたしを荒々しく抱いた。


ぎしぎしと悲鳴のように軋むベッドのスプリングの音が、何故だか悲しげに響いていた。


タカはいつも、抵抗する気もないあたしを押さえつける。


そして生み出される快楽だけが、きっとあたし達を繋ぐ唯一のものなのかもしれないけれど。


直人のような純粋さは、ここには必要のないものだ。



「そんな目して、まだ足りない?」


行為が終わると、タカはまるで別人のようにあたしの唇をついばむ。


頼りないだけの月明かりに照らされた彼の体は、やっぱり痛々しくも綺麗に見えた。


だから腕を伸ばすと、逆に抱き締められてしまう。


ぬくもりがひどく心地良い。



「何だよ、甘えてんの?」


タカは笑った。


こんなにも柔らかく笑う人なのにね。



「残念だけど、俺、これからちょっと出掛ける用あるから。」


密着していた個所が、瞬間に熱を失った。


タカが体を離して煙草を取りに行くためにドアを開けると、待っていたと言わんばかりにシロが入れ替わりで入ってくる。


そしてベッドの上に飛び乗ってきた。



「シロはホント、お前のことが好きなんだろうな。」


「妬いてる?」


「まぁ、オスだしな。」


それは、どう解釈すべきなのか。


さっさとリビングへときびすを返したタカの背中を見送りながら、あたしは軋む体を起き上がらせた。