「リサ、最近元気なくない?」


乃愛は言いながらも、さして心配する素振りは見せず、のん気にグロスを塗っていた。


あれから、タカからの連絡は一切なくなった。


いや、前から頻繁に連絡を取るような間柄ではなかったけど、でも、あんなことがあった後だし、知らない間に死んでいたりするかもしれない。


そう思うと、さすがに気分が悪くなってくる。



「リサ、何があったか知らないけど、テンション上げたいなら誰か呼ぼうか?」


梢はあたしの顔を覗き込みながらも、自分が遊びたいだけなんじゃないのかと思う。


余計な世話なら焼かないでほしい。



「別にあたし今、そういう気分じゃないし。」


「でも、大悟くんがまたリサと会いたいってさ。」


大悟?


言われて思考を巡らせ、あぁ、と思い出した。


いつぞや一発ヤッた男になんて、もう興味は欠片もない。


と、いうか、タカのことばかり考えているあたしは、一体何なのか。



「てか、もしかして春樹くんのことで?」


乃愛の言葉に、一瞬びくんと体が跳ねた。



「不吉な名前出さないでよ。」


けれど、途端にアイツに与えられた痛みの数々を思い出してしまった。


苦々しくも、春樹は今もエンペラーにいることだろう。


世界で一番大嫌いな男。