確かにエンペラーは、暴走族のようにチーム名を振りかざしてるわけでもなく、チーマーのように揃いのバンダナを巻いているわけでもない。


だから余計なことを言って墓穴を掘ってしまったことに今更気付き、あたしは思わず目を逸らした。



「答えろよ、リサ。」


「…別に、それくらいっ…」


言い掛けた時、ガッ、とハンドルを殴る音が響き、身をすくめてしまう。



「お前、エンペラーと何か関係があんのか?」


「………」


「答えろっつってんだろ!」


恐ろしいほどの剣幕で、タカは声を荒げた。


誤魔化すことは出来ないと悟り、あたしは諦めるように息を吐く。



「あの中には、世界で一番大嫌いなヤツがいるの。
だから別にあたしは何の関係もないし、それだけよ。」


タカはまだ納得していないような顔だが、あたしがそれ以上何も言う気がないとわかっているのだろう、



「あいつらには関わるな。」


それだけ吐き捨てられた。


タカはあたしを見ようとはしない。


そして長い沈黙が訪れた後で、



「エンペラーは、俺が立ち上げた組織だから。」


「……え?」


「あの頃は族みてぇなもんだったけど、今は相当危ねぇ。」


言葉少なく、でも彼は言う。



「俺は引退してから“雷帝”とか呼ばれて、あいつらと堀内組を繋いでる。」