タカはそう言って、あたしの手に触れた。


指の先だけが小さく絡む。



「まぁ、簡単には死んでやらねぇけどさ。」


彼はいつもそれが当然のように、“死”という単語を使いたがる。


生きててほしい、なんて言う気はないから、あたしも同じように笑った。


タカの長い指があたしの爪を弄ぶ。


人を殺したことがあるのかもしれない、でも汚れのない手。


ダークブラウンの、立て髪みたいなソフトモヒカンも、見慣れてみれば可愛いものだ。



「なぁ、どっか行くか。」


少し驚いた。



「どっかって、どこ?」


「わかんねぇけど、地獄とか?」


笑ってしまった。


天国になんて行けないあたし達だけど、ふたりで地獄まで旅をするのなら、悪くないんじゃないかと思う。



「それってどんなとこかな。」


「閻魔大王に折檻されるんだって。
もう二度と悪いことなんかしたくねぇー、って思うくらいひどいらしいぜ。」


「何それ、サディスト?」


タカも笑った。


それでも彼はきっと、真っ当な道に戻る気はないのだろうけど。


とても穏やかな朝には似つかわしくない会話で、けれどそれが、タカの歩む場所。