堀内組は、この辺にいくつかある組の中でも、ダントツに力があることで有名だ。


どうやら彼はヤクザだったらしい。


まぁ、スーツだからって、とてもサラリーマンには見えなかったけれど。



「道明くんは冬柴さんに可愛がられてて、俺も色々世話になってるから。」


別に聞いてもいないのに。


なのに、タカはそれをあたしに言って、どうしたいというのだろう。



「俺はきっと、道明くんに殺されて死ぬと思う。」


「………」


「まぁ、どうせくだらねぇことやってヘタ打った時だろうから、あの人を恨んだりはしねぇけどさ。」


それなら本望だ、とでも言いたいのだろうか。


悲しそうに口元を緩めたタカに、言葉が出ない。



「何か、嫌な話だね。」


目が合って、笑った。


タカの、切れ長の目元に出来る笑いジワが好きだった。


無駄な肉が削ぎ落とされたような傷だらけの体とか、シルバーのバングルを巻いた腕とか、とにかく綺麗だと思う。



「そんなに俺のこと眺めてて、穴が開いたらどうすんの。」


煙草を歯で咥え、彼はスカした顔で聞いてきた。



「穴が開いて死んじゃったら、骨くらい拾ってあげるから安心してよ。」


あたしの言葉に、タカはまた笑った。


朝日に照らされた静かな部屋に、ろくに現実味を帯びていない会話だけが溶ける。



「俺が死んだら、無様だな、って笑い飛ばしてくれりゃ良いから。」