まるで三流映画のようなことになっているのに、腕の痛みだけがリアルで、これは現実なんだと思い知らされている気分。


でも、絶対に逃げることは叶わない状況になってしまった。


男は車を走らせ、一番近くにあるラブホテルへと入ると、監視カメラからは見えない位置であたしの脇腹辺りにナイフを突き立てる。



「助けを求めようなんて考えんじゃねぇぞ。」


そんな言葉と共に、乱暴に部屋へと押し込められた。


下世話なピンクライトに染まる安っぽい一室は、あたしの人生の終わりには似合いの場所なのかもしれないけれど。



「あたしのこと、どうするつもり?」


「…どうしてほしい?」


「殺したいなら殺せば良いよ。」


へぇ、と見下すような瞳を落とし、彼は嘲笑う。



「死にたいのか?」


「…どっちでも良い。」


生きることも死ぬことも、同じだけ痛い。


ならばもう、散々遊び尽くしたし、どうせこのままでいるくらいなら、いっそ殺してくれることを願ってしまう。


そんなあたしを見て、やっぱり男は可笑しそうに笑っていた。



「泣いて震えることもしねぇのか。」


彼は死神のようで、けれど一方ではこの状況を愉しんでいるような感じにも見える。


ケンとかいう男はまだ生きているのだろうか。


まぁ、どっちにしたってあたしには何の関係もないけれど。


男があたしと同じ目線の高さまでしゃがみ込むと、再び喉元へと突き付けられた、刃物の輝き。



「財布と携帯、出せ。」