あたしを制してから、彼はスーツの内ポケットから封筒を取り出した。


そしてそれをタカに手渡す。



「これ、この前の分な。」


現金の束だというのは、見ればわかる。


受け取ったタカは中身を一瞥し、封筒ごとチェストの上に放り投げた。


道明とかいう男も、きっとタカと同じ人種なのだろう、ロレックスの時計が腕に栄える。



「しっかし、タカが羨ましいなぁ。」


彼はあたしを上から下まで舐めるように見て、



「なぁ、お前らどんなセックスすんの?」


ふざけた男だ。


だからご機嫌斜めになるタカを横目に、笑ってしまった。



「さーて、俺は用も済んだし、邪魔だろうから帰るよ。」


道明さんは言う。



「リサちゃん、また会おうな。
タカに飽きたら俺の部屋空けといてやるから、いつでもおいで。」


冗談とも本気ともつかないような笑顔と、口説き文句。


あたしはやっぱり曖昧にしか笑えず、タカの機嫌は悪くなる一方だった。


道明さんは笑いながらこちらに手をひらひらとさせ、さっさと部屋を出てしまう。


それを見送ってから、やっとタカは脱力するようにため息を吐き出した。



「あれ、堀内組の久保道明。」