タカは心底面倒くさそうな顔で舌打ちを混じらせるが、男はそれさえ笑い飛ばし、



「名前、何チャン?
まだ若ぇんだろ、いくつ?
あ、つか、タカとは結構長ぇの?」


質問攻めだ。


何なんだ、この男は、と驚いたまま、あたしはまずどれから答えれば良いかと考えあぐねてしまう。


が、こちらに近づいてくる男の肩を掴んで制したタカは、



「道明くん、落ち着けって。」


道明と呼ばれた彼は、こりゃすまねぇ、なんて笑っていた。


黒い短髪と、おしゃれに揃えられたあご鬚に、軟派な性格が滲み出ている顔だが、どこかタカと似て見える。



「リサはただの家出娘だから、道明くんが思ってるような関係じゃねぇよ。」


家出娘?


まぁ、あながち間違ってはいないが、でもそんな一言で括らないでほしいものだ。


リサちゃんか、と確認するようにこちらを見た道明さんと呼ばれた彼は、



「まぁ、タカは悪ぃヤツだけど、良いとこもあるしな。」


そんなフォローにもならないようなことを漏らし、ひとりでうんうんと頷いていた。


呆れた様子のタカと、きょとん顔のあたし。



「何かわかんないけど、あたし邪魔みたいだし、帰るよ。」


「いや、良いから。」


と、言ったのは、道明さん。



「俺は預かってるもの渡しに来ただけだから、リサちゃん帰んなくて良いよ。」