タカは気まぐれにあたしを後ろから抱き締め、背中に唇を触れさせる。


酒に酔って火照った体と、セックスをした後の気だるさで、思考は限りなく飽和していく。



「そういやお前、高校生だっけ。」


熱を失った彼の指先が、あてもなくあたしの体を這い滑る。



「じゃあ俺って今、未成年者略取ってやつ?」


何を今更。


そう言い掛けた言葉は、耳朶を甘噛みされた疼きによって遮られた。


例えばそれは、動物がじゃれ合う行為と似ているのかもしれないけれど。


無理やりに流し込んだ酒は体中を巡りながら、あたし自身を蝕んでいく。



「どうしようもねぇ女だな。」


タカの嘲笑の混じる笑い声。


それとはまるで正反対に、あたしの髪を梳く指先が優しくて、小さな戸惑いの中に身を預けた。



「ねぇ、タカ。」


「ん?」


「あたし、アンタに殺されたかった。」


呟いた台詞は宙を舞った。


虚しさが募って、やるせなさに覆い尽くされそうで、だから例えば煙草の火種のように、なじるように消してくれれば良かったのに。


なのに、やっぱりタカは何も言ってはくれなかった。


長すぎる静かな夜だった。