聞いておいて答えを求めない風の彼は、そのままこちらに背を向けて冷蔵庫を開け、ビールを2本取り出した。


そしてそのうちの1本が手渡される。



「そんな怖い顔しなくても、あたしは詮索したりしないから。」


言ってやると、タカは一瞬ひどく驚いた顔をして、でもすぐにあたしから視線を外した。


折角お風呂に入ってあたためられていた体の熱は、冷え切ったビールの缶によって、指先から簡単に奪われる。



「俺、多分お前が思うよりずっとヤバいことやってるよ。」


「…うん。」


「明日になったら死んでるかもしれない。」


「……うん。」


「金のためなら何だってするし、それに…」


そこまで聞き、堪らずもう良いよ、と遮った。


まるで懺悔するように言葉を並べる彼の姿に、ただ苦しくなってしまって、



「タカ、もう良いから。」


その目を見据え、強く言った。


どうかしてるんだ、あたしもタカも。


体だけの関係を望みながらも、他の何かを求めようとしてしまう。


だからこれ以上は一緒にいない方が良いと思いながらも、引き寄せられてその胸にうずめられた時、抵抗なんて出来なかった。



「何があったのか知らないけど、飲みたいなら付き合ってあげるから。」


タカは悲しそうな顔で口元を緩ませ、小さく頷いた。


例えばこの部屋のように、静かで、決して広くない世界でなら、あたし達はもう少し楽に生きられるのかもしれないのにね。