少なくともあたし達の間には、恋愛めいた感情なんてないし、タカだって他に女くらいいるはずだ。


けど、どうしてこんな行為ばかり繰り返してしまうのか。



「悲しいことでもあった?」


ただ少しだけ、あたしを抱き締める腕が震えている気がしたから。


だから聞いたのに、



「マジ、悪かった。」


彼はまた同じ言葉を返してきた。


最初に会ったあの日の印象とは比べものにならないほど、今のこの人は、泣き出してしまいそうな瞳を揺らしている。


いたたまれなくなりそうだ。


それから少し間を置いて、体を離したタカは言う。



「お前、明日休みだろ?
ついでだし、泊まっていけよ。」


まったく、素直ではないらしい。


だから笑ってしまって、すると彼はまたバツが悪そうに目を逸らした。



「つーか俺ホント、こんなん言うキャラじゃねぇし。」


お前といると調子狂うわ。


ぽつりと漏らされた台詞は聞き流してやった。


タカが咥えた煙草の煙は、行き場を探すように揺れて消える。


あたしが唯一呼吸の仕方を思い出せる場所。