ほとんど無理やりな行為を終えてすぐ、鳴ったのはタカの携帯。


彼はディスプレイを確認し、舌打ち混じりに通話ボタンに親指を乗せる。



「あぁ、わかってるよ、そのうち時間取ってやるから。
もう良いだろうが、切るぞ。」


自分だって女からの電話じゃないか。


漏れ聞こえてくる声に何だか虚しくなって、軋んだ体を起こすと、立ち上がることさえままならない自分には笑えた。


これだから立ちバックは困る。



「あたしもう帰るよ、用も済んだでしょ。」


リサ、と制止する声に呼び止められ、顔だけを向けた。


が、先ほどまであたしを犯していた彼は、途端にバツが悪そうな様子に変わる。



「何?」


思わず眉を寄せた刹那、抱き締められてまた驚いた。


抵抗の言葉を並べようとすれば、今度は塞ぐように唇が奪われる。



「悪かったよ。」


タカもあたしも目を合わせない。



「俺、どうかしてたわ。」


ちょっと色々あってさ、イラついてて。


そんな風に言ってから、彼は悲しそうな目であたしを見た。


別に言い訳なんて聞く気はないけれど、でもそのあまりにも辛そうな顔に言葉が出ない。


だから、



「…大丈夫。」


何が大丈夫なのかもわからないけれど、結局、言えたのはそれだけ。


会話の糸口さえ見つけられないほど、沈黙が重い。