もちろん奢ってもらって食事を終え、カラオケ屋で酒が入ったあたし達のテンションは高かった。


いや、酔っ払ってしまいたかっただけかもしれないけれど。


男はこれ見よがしに絡んでくる。


密着した場所から、酒と煙草とシトラス系の香水が混じった匂いが鼻をついた。


気分が悪いなんてもんじゃない。



「可愛いね。」


ここに来てから、まだ一曲も入れていないのに。


なのにそんな言葉をあたしの耳に寄せた彼に、唇を奪われた。


いや、拒否しなかったのだから、“奪われた”という表現は間違っているのかもしれないけれど。



「俺さ、店員とツレなんだよね。」


聞いてもいないのに、



「ここ、誰もこないし見えないから。」


このカラオケ屋の構造を熟知しているのだろう、彼は言った。


確かに他より小窓が小さくて、一番奥にあるこの部屋は、外からでは見えにくいだろうけど。



「俺、マジでリサちゃんといるとヤバいわ。」


酒の入った思考に男の声がダイレクトに響いた。


また唇が触れ、制服の隙間を縫うように触手が侵入してくる。


今日初めて会った男に体を貪られながら、与えられる快楽に身を委ねるように、目を閉じた。