そう、それは一週間ほど前のこと。


湾岸地区から近い場所で、身元不明の男性遺体が海から引き揚げられたそうだ。


顔はぐちゃぐちゃにされており、激しく暴行を受けた末に、射殺されたと聞いた。


それは道明さんが殺された時と同じ、トカレフによるもの。


遺体の身体的特徴はタカと酷似していて、遺留品からは免許証も見つかったらしいけれど。



「あれはタカじゃないですよ。」


だってDNA鑑定はしていないし、第一、遺体の腕に古傷なんて見つからなかったらしいから。


何より、そっくりさんが現れたってこれがあれば見分けがつく、と、タカが前に言っていたじゃないか。



「タカは生きてます。」


「………」


「道明さん以外に命なんて渡さないって、あたしと約束してくれたんですから。」


結香さんは頷いた。



「あたしも信じてるよ、タカさんが無事なこと。」


「…結香、さん…」


「あの人は、久保さんが守ってくれた命を簡単に奪われるようなヘマなんてしないし、リサに会うためにきっと戻ってくるはずだから。」


好きだった人を失った結香さん。


なのにいつもあたしを気遣い、励ましてくれる。



「大丈夫だよ。」


「はい、ありがとうございます。」


街を彩るイルミネーションは、やけに綺麗だと思ってしまう。


本当なら今頃は、と考えると、時々やりきれなくなることもあるけれど。