彼は噛み締めるように言った。



「だからこれ以上俺の運命に巻き込みたくねぇし、何よりお前には家族がいて、居場所があって、色んな可能性がある未来が待ってんだ。」


「けど、タカがいなくなるなんて考えられないよ!」


今更どうやって、そんな世界で生きろというのだろう。


年を越したらふたりで温泉に行って、出来なかったことをいっぱいしようと約束したはずじゃない。


なのに、タカは愛しそうに目を細め、



「愛した女を不幸にさせんなって、道明くんから言われたからさ。」


じゃあ結香さんはどうなるのだろう。


何より、離れることで幸せになれるなんて、そんなの嫌だよ。


けれどタカはひどく穏やかな声で、



「いつか必ず戻ってきて、お前のこと迎えに行くから。」


「………」


「俺、絶対死なねぇからさ。」


拭われても拭われても、涙が溢れる。



「そんなの信じられないよ!」


「バーカ。
俺を殺して良いのは道明くんだけだし、あの人以外には命なんて渡さねぇから。」


そして奪うように触れた唇。


タカは体を離して立ち上がった。



「待ってろなんて言わねぇけど、次に会った時には俺の手で幸せにしてやるから、楽しみにしとけよな。」


それって待ってろってことと同じじゃないか。


タカは自分の胸にあるリングを握り、



「お前のためにって思ったら、もう怖いもんなんか何もねぇよ。」