タカまで一体何を言っているのだろう。


嘘だ、嘘だ、と首を振りながらも、そんな現実は受け入れられるはずもない。



『さっき俺、冬柴さんに呼び出されて行ってみたら、囲まれて、銃向けられて。』


「………」


『部外者のくせに知りすぎてるし、怪しい動きもしてるからって。
どのみち俺はもう用済みだって言われたよ。』


春樹を逃がしたこと。


そしてその“姉”であるあたしとの繋がりさえ、気付かれていたらしい。



『なのに道明くん、俺のこと庇ってさ…』


電話口の向こうでそれ以上の言葉を堪え、タカもまた、泣いていた。


だからこれは紛れもない“現実”なんだろうけど。



『リサ。』


彼は息を吐き、



『時間がないし、聞いてくれ。』


強い口調であたしに言った。



『俺、追われてるんだ。』


「ねぇ、今どこにいるの?!」


まくし立てると、タカは一瞬沈黙した後で、



『すげぇ危険だけど、S町の廃墟ビルまで来られるか?』


聞いた時にはきびすを返していた。


なりふりなんて構ってられなくて、何よりタカのことが心配だった。


頭の中に浮かんでは消える、道明さんの顔や言葉。


生きろと言ってくれたあの日の笑顔が、今は悲しい。