「俺さぁ、こんな時に言うべきじゃねぇのかもしれねぇけど、ずっと楽しかったよ。」


「…え?」


「タカがリサちゃんのために、って考えるようになってから、何かアイツやっと生きること真面目に考え始めたみてぇだし。
あと、シロなんていっつも俺にじゃれてくるから。」


「………」


「3人で飯食って騒いだりとかさ、そういうの、別に大したことじゃねぇんだけど、俺すげぇ楽しかったんだ。」


一体どうしたというのだろう。


酔っ払ってるみたいな道明さんは、それでも饒舌に話す。



「家族っつーか、仲間っつーか、悪くねぇもんだよな、って。」


そこまで言ってから、ふと彼は思い付いたように、



「そうだ、色んなことが落ち着いて、ちょっとあったかくなったら、またみんなでどっか行こうぜ。
俺今度クルーザーかっぱらってきてやっから、沖の方に無人島あるし、そこでバーベキューすんのも悪くねぇな。」


「そうだね、楽しみにしとくよ。」


「あと、結香も誘ってさ。」


さらりと言われた言葉にまた驚いた。


対向車が照らす彼の横顔は、やっぱり全然ヤクザになんて見えないものだ。



「つーか、誰にも言うなよ?」


道明さんはそう前置きをした上で、



「今まで俺、アイのこと理由にして、色んなことから逃げてたんだ。
けどさ、やっぱそれじゃダメだし、そろそろ結香のこと考えてやるのも悪くねぇかも、って。」


「………」


「ほら、アイツ結構無理するタイプだし、そういうのあんま見たくねぇからさ。
まぁ、結局は俺、好きってことなんだろうけど。」