互いの存在を恋しく思う。


たったそれだけのことで、あたしは何故だか泣きそうになった。


無意識のうちに首元のリングに触れてしまう。



『お前に伝えたいこと、いっぱいあるんだ。』


タカは噛み締めるように言った。



『なぁ、そっち戻ったらさ、聞いてくれるか?』


「うん。」


あたしが頷くと、



『あ、キャッチ入ったから、もう切るわ。』


そんな言葉と共に、通話が途切れた。


携帯を耳から離し、息を吐く。


大丈夫、大丈夫、とあたしは、心の中で繰り返す。


胸元で輝くタカとのお揃いは、だけども熱を失っていた。


それが少し不安ではあるけれど。


悶々としたまま5分ほどが過ぎた時、今度の着信は道明さんからだった。


どうやらタカに、あたしを迎えに行ってほしい、と頼まれたらしい。


まったく、優しい人たちだ。


平気だから、と断ったあたしを無視で、彼はこれから行くよ、と言い、電話を切った。


なので仕方がなくもマンションの下に出て待っていると、見慣れた黒塗りの車が横付けしてきた。


窓を開けた道明さんに促され、あたしは初めてその助手席へと乗り込んだ。