本当は、春樹のためにも真っ先に両親に連絡するのが当然なのだと思う。


けど、でも、言えなかった。


あの子が死の淵に立っているだなんて現実は、例えあれから何日が過ぎようとも、受け入れられるはずなんてないのだから。


何よりあたし達は見捨てられたのだ。


今更助けてと電話をしたところで、拒否される可能性だってある。


そうなれば、春樹の命はどうなってしまうのだろう。



「リサ、ちょっと話したいことがあるんだけど。」


タカは言うが、茫然と過ごすあたしには、そんなものさえ耳を通り抜ける。


うんともすんとも言わないあたしを見て、彼は何かを伝えることを諦めたのか、ため息だけを混じらせた。


道明さんの名前が話題にのぼることはない。


だから、堀内組があれからどうなったのか、それどころかテレビのニュースひとつ、あたしは知らなかった。


そういえば、あたしが病院に居続けることは危険だと、道明さんは言っていた。


けれどタカは何も言わないから、それに甘えていたのだと思う。


結局あたしは、自分のことばかりだった。


どれほど身に危険が迫っていたか、そして守られていたかなんて、気付けなかったから。


ただ、何もかもを拒否していたあたしに、



「昔の俺みたいだから。」


と、言って、タカはずっと傍にいてくれたよね。


どうしてもっとちゃんと、それを大切に出来なかったんだろう。


今では後悔ばかりだよ。